
よりよい社会に変えていく、突破口に
シニアチーフアーキテクト
西田 好伸
大きな潮流変化に、進んでぶつかっていく
IT業界に大きな潮流変化が訪れたとき、進んでぶつかってその波に乗っていく。自分の経歴を振り返ると、そんなことを繰り返してきたように思います。
私が野村総合研究所(NRI)に入社したのは1993年ですが、その頃はメインフレームからダウンサイジング、分散システムの時代に向かっていました。当時のNRIトップは「日本で最初にWindowsで基幹システムをつくる」をミッションに掲げ、新入社員だった私は、周囲の誰も触ったことがないWindowsやオラクルを使うべく、必要とあらば開発本社のあるシアトルへ出向き、寝食を忘れて日夜、設計に取り組みました。
次に来たのがインターネットの波です。私は、当時手数料完全自由化をきっかけに広がったインターネットによる取引システム構築を皮切りに様々なECサイト構築案件に携わりました。当時はGoogle検索などまだなかった時代です。そこには誰も教えてくれる人などなく、自らの手足を使って技術を調べて体得し、実装につなげました。
次の波は2000年代のクラウドです。私がクラウドを知ったとき、これは第3の波になると直感し、クラウドに強く関わりたいと思いました。とりわけAWSに大きな可能性を感じたことから、Amazonに通ってAWSのパートナーシップを取りました。ただNRI社内では「お客さまの業務にどんな影響が及ぶかわからない」からとAWSの活用には及び腰でした。しかしAWSなら、コストも手間も作業期間も大幅に短縮でき、お客さまには大きなメリットがある。そこで、先に案件をいくつかつくり実績を積み上げました。その実績が説得力を増し、その後AWSの活用は、一気に広がっていきます。今となってはクラウド活用は当たり前なことになりましたが、当時は周りにはとても受け入れられるものではありませんでした。
最新技術を追いかけるだけでなく、社会に実装する
まだ誰も扱ったことがない技術を体得し、ビジネスの現場に役立てたい。そういう気持ちが、私の場合は仕事の原動力になっています。エンジニアなら、最新技術に興味を持つし、その勉強もするでしょう。けれど、それをお客さまに役立つところまで昇華できるかというと、実際は難しい。私は実装できる水準まで持っていくことにこだわっています。
それと、新しい技術を追いかけるだけでなく、お客さまにとって価値あるものを提供できるなら、従来の手法や生産体制、ツールも一気に変えてしまう。成果を出すことを第一に、合理的な考え方を実践したいと思っています。
そして、よりより社会に変えていくためには既存の枠組みの延長では限界があります。本気で良くしていきたいなら常識をも変えていく意志が必要と思います。そういう意味ではこれまでまだ常識となっていない分野に自ら飛び込んで、そこで自分が常識を作っていくという楽しさを若い頃から経験することがとても重要なのだと今思う次第です。
建設・土木業界の課題解決を目指すDXプロジェクト
現在はNRIデジタルで、DXという4つ目の波に直面しています。私が目下、関わっているのは、建設土木業界のDXプロジェクトです。AIやドローン、VR、AR、クラウドなどを活用して建設現場の常識を変えていく取り組みです。
慢性的な人手不足に加え、どれほど細心の注意を払ってもケガやリスクがつきものです。人材不足解消や安全性向上はもちろん、生産性の向上、熟練技術の次世代継承を目指しています。
例えば、建設土木の世界では、ショベルカーなど建機を操作できる熟練の人材が不足しています。一方で、工事はなくなりません。こうした課題をDXで解決しようというのが、このプロジェクトの試みの一つです。建設土木の業界でさまざまな効率化が進めば、重労働のイメージが払拭され、この業界に関わる人たちの仕事スタイルも変わっていくと思います。
DXというと多くの人は、デジタル技術を活用して新しい何かを創ることに目がいきがちです。それはそれでとても大切ですが、本質的にはこれまでのやり方を変えていかなければ、新しい何かは実現しないと思っています。現在のプロジェクトにおいて、お客さまのトップは、建設業界の方々とともに、これまでのやり方、考え方、体制を変えていく必要がある、と発言されています。私はこれまでの経験を活かして、「やり方を変えていく」ことでお役に立ちたいと思っています。今回のプロジェクトは、高齢社会の日本が抱える社会課題の解決にもつながるでしょう。よりよい社会に変えていく、そのための突破口に自分がなれたらと思っています。