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業界全体の課題を秘密計算で解消! 共通課題解決型の秘密計算活用とは?

こんにちは。NRIデジタルの西原です。
これまで3回にわたり、私たちが注目している秘密計算というプライバシー技術の概要とその可能性について紹介してきました。今回は、私たちが定義する秘密計算活用5類型の中の「共通課題解決型」について、ユースケースを交えてご紹介します。

※秘密計算技術の概要と仕組みについては過去の記事をぜひ読んでみて下さい。
第1回:「プライバシーテックでデータ活用社会を加速! プライバシーとデータ活用を両立する「秘密計算技術」とは?」
第2回:「データ活用社会を加速するプライバシー技術!「秘密計算」の方式とその仕組み」
第3回:「データ活用を促進する秘密計算技術!その事例と活用5類型」

秘密計算の活用パターン 「共通課題解決型」

国内外の秘密計算活用事例やユースケースを調べていく中で、秘密計算活用は以下のような5パターンに類型化できると考えました。今回の記事では、この5類型の中の「共通課題解決型」について紹介したいと思います。

共通課題解決型は、同一業界の企業間で共通の課題があるが、自社データだけでは解決が難しい場合に秘密計算を活用するパターンです。業界全体の課題の中には、各企業のデータを統合して活用することで解決できる課題もありますが、データは各企業の資産であり企業間でのデータ共有はなかなか進みません。秘密計算を活用すれば、生データを共有することなく統合して解析することができ、個々の企業が保持するデータを公開せず、業界全体で協力して課題解決を目指すことができるようになります。

「共通課題解決型」のユースケース

共通課題解決型に分類されるユースケースを2つ紹介します。

ユースケース1:サプライチェーンの最適化

想定されるユースケースとして、サプライチェーン最適化への活用が考えられます。製品のサプライチェーン上には生産者・加工業者・卸売り業者・小売業者・消費者といった複数の企業・ロールが登場します。サプライチェーン全体の最適化を行うためには、各企業の生産・在庫・販売などの各種データを統合し分析する必要がありますが、これらのデータは各企業の企業秘密であり外部への共有が難しいデータでもあります。秘密計算を活用すれば、サプライチェーン参加者の各種データを秘匿したまま一元的に分析することができ、各参加者に最適な生産計画/仕入計画などを算出することができるようになります。サプライチェーン上の企業の機密データを共有せずに共通課題であるサプライチェーンの最適化を実現できる、共通課題解決型がマッチする良いユースケースと言えるでしょう。

 

ユースケース2:研究開発データの業界内活用

研究開発データを業界内で統合し活用するようなユースーケースも考えられるでしょう。秘密計算を活用すれば、製造メーカーや素材メーカー各社が持つ研究開発データを秘匿して共有し、各社の研究開発に利用することができるようになります。各社が持つ個々のデータでは価値ある結果が得られない場合でも、全体データを含めて分析することで価値ある結果が得られるようになる可能性があります。

まとめ

本記事では、私たちが考えている秘密計算活用の5類型の中の「共通課題解決型」についてユースケースを交えて解説しました。共通課題解決型は、同一業界の企業間で共通の課題があるが、自社データだけでは解決が難しい場合に秘密計算を活用するパターンです。これまでプライバシーや企業秘密の観点から実現できていなかった非競争領域での企業間の協力が、秘密計算を活用することで実現できるようになると考えています。

<本記事に関するお問い合わせ>
NRIデジタル株式会社 担当 安増・中島・西原