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秘密計算活用5類型の1つ「プライバシー/企業機密配慮型」のユースケースを解説!

こんにちは。NRIデジタル西原佑です。
これまで何度か、私たちが注目しているプライバシー技術「秘密計算」の概要とその可能性について紹介してきました。今回は、私たちが定義する秘密計算活用5類型の中の「プライバシー/企業機密配慮型」について、ユースケースを交えてご紹介します。
※これまでの記事では秘密計算の方式の説明や事例紹介などを説明しています。ぜひご覧ください。
「秘密計算」の記事

秘密計算とは

秘密計算とは「データを暗号化したまま計算するプライバシー保護技術」です。
秘密計算では、データを保持する側がデータを暗号化した上で、分析・計算する側へ渡します。
分析の過程では、暗号化が一度も解かれることなく、データの中身が分からない状態で計算され、計算結果のみが出力されます。

秘密計算活用5類型の1つ「プライバシー/企業機密配慮型」のユースケースを解説!01

従来、暗号化して保存しているデータも分析の際は必ず復号する必要がありましたが、秘密計算を活用すれば復号せず分析することができ、よりセキュリティレベルが向上します。秘密計算によって、これまでなかなか進まなかった企業間でのデータ流通・活用が促進されると我々は考えています。

秘密計算の活用5パターンと「プライバシー/企業機密配慮型」

秘密計算活用の5類型

近年、秘密計算を活用した事例が国内外で多く生まれてきています。
それらの事例・ユースケースを調査する中で、秘密計算が解決する課題は以下のような5パターンに類型化できると、私たちは考えています。今回の記事では、この5類型の中の「プライバシー/企業機密配慮型」について紹介したいと思います。

秘密計算活用5類型の1つ「プライバシー/企業機密配慮型」のユースケースを解説!02

※各類型の詳細は、以下の記事を参照ください。
データ活用を促進する秘密計算技術!その事例と活用5類型

「プライバシー/企業機密配慮型」とは?

機微情報や企業の機密情報の活用する際には、プライバシーや機密の取り扱いについて最大限の配慮が求められます。そのようなシーンに、秘密計算を活用するパターンです。
秘密計算を利用すれば、計算過程でも秘匿化された状態でデータを扱うことができるため、プライバシー性/機密性の高いデータを取り扱う場合について、秘密計算は特に有用と言えます。また、データ分析に秘密計算を活用することは消費者の安心感につながり、データ活用時の消費者同意が得やすくなるという副次的な効果も考えられるでしょう。

「プライバシー/企業機密配慮型」のユースケース

以下では、プライバシー/企業機密配慮型に分類される想定ユースケースを紹介します。

プライバシーを保った上での感染症濃厚接触者の検出

想定されるユースケースとして、感染症の濃厚接触者の検出が挙げられます。
感染症の濃厚接触者を検出するためには、各ユーザの行動履歴(位置情報)を掛け合わせて計算を行う必要がありますが、行動履歴(位置情報)は特にセンシティブなプライバシーデータです。
収集されるユーザの心理を考えると位置情報は提供したくないデータと考えられますし、収集する側にとってもデータを保管・処理する上でそれ相応のセキュリティが求められます。
秘密計算を使えば、暗号化したままで保管・計算が可能になるため、漏洩の危険性を減らすことができます。ユーザとしても、秘密計算で自身のデータが暗号化されたまま取り扱われることが分かれば、より安心して自身のデータを預けられるようになるかもしれません。

秘密計算活用5類型の1つ「プライバシー/企業機密配慮型」のユースケースを解説!04

プライバシー/企業機密の両方を保護した状態での与信審査

また、与信審査への応用も考えられるでしょう。与信審査を行う与信サービス企業が、自社で保有する独自の与信モデルを用いて、消費者個人の与信を審査するシーンを考えてみます。
このシーンでは、以下の2つの機密性の高い情報が登場します。

  • 与信サービス企業が保有する独自の与信モデル (企業の資産であり企業機密)
  • 与信審査に必要な消費者個人のパーソナルデータ (資産情報などが含まれるプライバシーデータ)

与信サービス企業は自社の資産である与信モデルをできるだけ公開したくない、与信を受ける消費者は自身のパーソナルデータをできるだけ公開したくない、というこのようなシーンでも、秘密計算を活用すればそれぞれの情報を秘匿(暗号化)にしたまま掛け合わせて計算を行い、与信を算出することができます。

秘密計算活用5類型の1つ「プライバシー/企業機密配慮型」のユースケースを解説!04

上述した2例のように、秘密計算を活用することでデータを公開せず安全に計算処理を実現できます。これまで企業機密・プライバシー保護のために実現できていなかったユースケースも実現可能となり、データ活用がさらに広がっていくでしょう。

まとめ

本記事では、私たちが考えている秘密計算活用の5類型の中の「プライバシー/企業機密配慮型」についてユースケースを交えて解説しました。
プライバシー/企業機密配慮型は、プライバシー性の高いパーソナルデータ/企業機密を他データと掛け合わせて活用するシーンで、秘密計算を活用するパターンです。
これまでプライバシー/企業秘密の流出を懸念し活用できていなかったデータに対して、秘密計算を活用することで、これまで実現できなかった新たな価値が生み出されていく可能性があると私たちは考えています。

<本記事に関するお問い合わせ>
NRIデジタル株式会社 担当 安増・中島・西原