アフターデジタルを視野にOMO時代のデジタルマーケティングを実践中
萩村 卓也
得意とするDXに関する技術やスキルを教えてください。
アジャイル開発とデジタルマーケティングが私の強みです。アジャイル開発は単なる開発手法としてのスキルだけではなく、デザイン思考やサービスデザイン、UXデザインと合わせて実行をします。デジタルマーケティングはまだまだ修行中ではありますが、最近はIoTやAR/VR技術も勉強しており、それらを組み合わせたOMO時代のデジタルマーケティングを実践中です。
OMO時代のデジタルマーケティングというと大げさですが、つまるところオンラインとオフラインを融合させてユーザー行動を把握しより良い体験をつくっていくことを目的とした取り組みです。背景には大きく「アフターデジタルという概念」「センシング・IoT技術の発達」の2つがあります。アフターデジタルの考え方では、「オンラインが起点であり平時の場であり、オフラインはより深くコミュニケーションする体験価値が高い場である」となり、リアルな接点にデジタルが付随するのではなく、常時デジタルに接しておりその一部としてリアルがあることになります。つまり、リアルでどんな体験が提供できるかが重要となり、そのためにユーザーの行動データを分析し、サービスの体験として還元できるかが重要なポイントとなります。ですので、これまでのオンライン中心の“デジタルマーケティング”から一歩進んだ観点での検討や分析が必要になると考えています。
センシング・IoT技術の発達という点では、技術の高度化もさることながら民主化が一気に進んでいます。技術として顔識別や店舗内での行動把握が精度高くできるようになったことに加え、それを結果(データ)として簡単に受け取れる製品やサービスが常識的な価格帯で出てきました。それにより、我々としてはデータを「どうやって取得するか」ではなく「どう扱うか」や「どうオンラインのデータと組み合わせるか」という点に注力できるようになったのがOMO時代のデジタルマーケティングを考える上で非常に大きなポイントです。
こうしたスキルをどのように培ったのでしょうか。
大学時代は、情報系の学科でプログラミングの基礎の基礎を勉強しました。昔からモノづくりが大好きだったので、夢中になって学び、授業外でもプログラミングをするほどでした。
2012年に野村総合研究所(NRI)に入社し、最初に配属されたのは保険業界向けのソリューションを提供する本部でした。大型プロジェクトに参画してSEの基礎を身につけ、小規模ながらプロジェクトマネージャーも経験しました。アプリケーションエンジニアの王道を進んでいたと思います。
転機があったのは2017年です。若手3人で金融領域でのNRIの新規ビジネスをつくる機会を得ました。特に決まったターゲット顧客や製品もなく、ゼロベースから企画していくものでした。同じ年に、エクスペリエンスデザイン会社のbtrax社によるデザイン思考研修に参加し、さまざまなサービスが生み出されたサンフランシスコにて、アジャイル開発やデザイン思考を身につけました。
2019年にNRIデジタルへ出向し、不動産業界を中心に新規事業立ち上げやデジタルマーケティングの支援をしています。興味のあったIoTやAR/VR技術に本格的に取り組み、デジタルマーケティングとの掛け合わせを始めています。
DXビジネスに関わるうえで、心がけていることは何でしょうか。
そもそも、新規ビジネスに限らず、お客さまとビジネスを考えるときは銀の弾丸(※)はないと思っています。「顧客を理解する」、「試行錯誤して進める」という点を大切にし、「やりながら考える」ことが多いです。これは、DXスキルを実際のビジネスに活かすうえでも同じです。ビジネスをつくっていく上でITは一要素でしかなく、他にも社会やお客さまの状況、ユーザーの状況、お客さまとの関係性、競合他社など色々な要素が絡んでくる中で、「ITでどう解決するか」だけの視点ではより良いモノづくりはできないと考えています。
※銀の弾丸:ソフトウエア開発やビジネス開発において、どんなに困難な課題も一気に解決できるような手法や理論のこと。ソフトウエア工学の分野において、フレデリック・ブルックスが1986年に発表した論文で”No Silver Bullet(銀の弾丸など無い)”というフレーズを用いて、全ての問題に通用する万能な解決策などは存在しないと論じたことから、理想論的な設計・開発について否定的な意味で用いられる。
これから関わりたいDXビジネスについて教えてください。
Withコロナ時代において、DXの進め方が大きく変わると感じています。これからのDXはトップダウン型のDXになると考えています。企業として収益の屋台骨を守りつつ、緩やかにDXを進めていくのではなく、トップダウンで半ば強制的にあるいはドラスティックに進めることを余儀なくされ、現場はこれまで以上にスピード感と変革が求められるのでないでしょうか。そういった流れはNRIグループにとってはチャンスだと感じており、積極的に関わっていきたいと考えています。
最後に、今後の抱負をお願いします。
今、IoT や AR/VR 技術のビジネス利用の可能性が高まっていると感じています。NRIデジタルが強みにしているデジタルマーケティングを絡めて、日本のOMO(オンラインとオフラインの融合)の仕組みをつくっていこうと考えています。すでにKARTEという強力なCXプラットフォームを提供するプレイド社と一緒に、三菱地所様のDXを支援する取り組みを始めています。