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D2C Onboardが新たなマーケティングDXを提供します

消費者行動のデジタルシフトや価値観の変化といった「消費形態」の急速な変容によって、既存のモノづくりビジネスに大きな変革が起こっています。背景には2000年代後半から注目され始めた、D2Cもその一つとして挙げられます。

本記事は、D2Cの基礎的な情報と不動産や車などを総称したリアルアセット企業との関連性、NRIデジタルが実施したマーケティングDX事例の内容とその成果について解説します。

目次
  1. D2Cとは何か?
  2. リアルアセット企業のマーケティング変革(DX)になぜD2Cが必要なのか
  3. D2C OnBoardで利用するSaaSサービス
  4. 既存のお客様への D2C テストマーケティング事例
  5. D2Cビジネスモデルを構築してイノベーションを

D2Cとは何か?

D2Cとは「Direct to Consumer」の略語です。メーカーが消費者に直接、商品やサービスを提供する販売手法の1つです。また、NRIデジタルでは、消費者のニーズを直接支援できるようになる事でCX(顧客満足度)の向上にもつながると考えています。
D2Cを構築するにあたっては「自社ECサイト(自社ドメイン)」を用いてメーカーのオリジナル商品を販売するのが一般的です。また、大量生産ではなく少量の高付加価値商品を提供するケースが多い傾向にあります。

D2Cは従来のB2Cビジネスと比べると、卸売業者や小売店を経由する必要がありません。そのため、流通に必要なコストを削減でき、利益率の向上を図れるほか、コスト競争力の強化による売り上げにプラスの影響をもたらします。
もちろん、ブランドと消費者の距離が近くなることで商品やサービスの企画段階から「双方向のコミュニケーション」が取りやすくなるのも大きなメリットといえるでしょう。

メーカーと消費者のコミュニケーションが円滑になることで、メーカー側にとっては「消費者の意見を反映したサービスを提供しやすくなる」という利点を得られやすくなります。また、CX(顧客体験)の価値向上も図りやすくなるため、単純に商品やサービスを提供するだけでなく、「自社(ブランド)のファンづくり」の創造にもつながります。

つまり、D2Cは消費者と直接つながることで「収益性」と「ブランド性」を向上させ、さらに従来よりも個人へのマーケティングがしやすくなったといえるでしょう。

DXとD2C

近年、国を挙げて推進しているDX(デジタルトランスフォーメーション)の実現においてD2Cは非常に重要な要素の1つとして考えられています。DXの定義については諸説ありますが、経済産業省が2018年に発表した「DXレポート~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~」によると、以下のように記載されています。

■DXの定義
企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること。
※一部抜粋:DXレポート~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_03.pdf
 
経済産業省のDXの定義をさらに分かりやすくすると「顧客への提供価値に着目し、デジタルを活用してビジネスを変革すること」と要約できます。また、NRIはこの経済構造の変化こそが「第4次産業革命」の具体的な流れであり、NRIはその過程における個々の取り組みをDXと捉えています。ビジネス変革するためには「顧客への提供価値」の情報の粒度、解像度を上げる必要があります。そのためには従来のB2Cビジネスで困難だった、メーカーがデジタルの力で消費者の購買プロセスに横断的に関与することで、消費者の根源的なニーズの充足を直接的に支援するビジネスモデルを実現する必要があるのです。

上記を踏まえると、これまで「消費者との接点を持っていない」もしくは「消費者への理解が十分でない」企業がD2Cにチャレンジする意義は非常に大きいといえるでしょう。その主な理由を以下で紹介します。

リアルアセット企業のマーケティング変革(DX)になぜD2Cが必要なのか

DXを実現するためのD2Cビジネスの類型について、NRIデジタルは「メーカーDX型」と「リアルアセットDX型」に大別しています。

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いずれもD2Cの必要性は高いが、自社製品の価値(価格)が高価であり、売り切りが基本である「リアルアセット企業」のDXにおいてD2Cは特に注視すべきでしょう。一般的にリアルアセットとは投資用語として使われることが多く、エネルギーや道路といったインフラ系の商材を指します。NRIデジタルが定義するリアルアセットは一般消費者の「高単価で買い替えサイクルが長い売り切り型の商品」の視点に立ち、不動産(マンション、戸建て)や車など一般消費者における「人生に数回あるかないかの買い物」の商品・製品を提供している企業も含まれています。

リアルアセット企業の商品は基本的に買い替えサイクルが日用品などと比べると、非常に長く、消費者と継続した接点を持ち続ける機会は多くありません。一方、高額な商品だからこそ、既存商品に加えて「付加価値(付加サービス)」を提供する意義も大きいと考えられます。

そのため、売り切り型の既存商品に加えて、ユーザにサービスを提供できるD2Cのビジネスモデルを構築して消費者との直接接点を持つことで、従来は気付けなかった消費者の環境やライフステージの変化に応じて、適切なタイミング・内容で提案することができます。

■不動産売買における例
  • 顧客属性:
    5年前に居住目的で都内駅近1LDKマンションを購入した共働き夫婦
  • 現状:
    ECサイトの購入履歴を確認すると、直近で「乳幼児+大人用の防災グッズ」を3人分購入している。
  • 考察:
    子どもが生まれたばかりであり、3年後(幼稚園)もしくは7年後(小学校)に上がるタイミングで間取りが手狭になるため買い替えの提案ができそう。
  • アクション:
    ちょうど3年後に竣工する都下の宅地プロジェクトの3LDKがあるので、今ダイレクトメールを打ってみよう。

D2C OnBoardで利用するSaaSサービス

D2Cビジネスを立ち上げる上で早期に価値検証を繰り返すことができる環境を構築することが大切です。そのためにクラウドで提供されるソフトウェア「SaaS(Software as a Service)」は、導入・運用コストや早期の立ち上げといった「時間を買う」という観点からも必要性が高いのです。

NRIデジタルでは、企業のD2Cビジネスをワンストップで支援するサービス「D2C OnBoard」を提供しています。同サービスでは、3つの製品と3つのオプション製品、計6種類のSaaS/PaaSを組み合わせて、ECサイトや会員専用サイト、PoCサイトを1~3ヶ月という短期間での構築が可能になります。高度なデジタルマーケティングやアナリティクスにも対応する「DXビジネス検証プログラム」です。

3つの製品
  • 国内外へのオンライン販売を始められるマルチチャネルコマースプラットフォーム「Shopify」
  • 利用者行動をリアルタイム解析し、自由なコミュニケーションをワンストップで実現できるCXプラットフォーム「KARTE」
  • Googleがクラウド上で提供する「Google Cloud™」
3つのオプション製品
  • クラウド型CRMプラットフォーム「HubSpot」
  • データ統合自動化サービス「trocco」
  • システム性能管理と分析プラットフォーム「New Relic」

「Shopify」は、SSO・会員基盤との連携、拡張ストア(開設できるサイト数が同一ブランドであれば9個可能)、検証環境などの構築が可能になった「Shopify Plus」も選択可能です。今後、エンタープライズ向けには「Shopify Plus」が展開されることが予想されます。

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既存のお客様への D2C テストマーケティング事例

NRIデジタルでは、ある大型タワーマンション(1500戸規模)を対象に3ヶ月のテストマーケティングを実施しました。マンションに住んでいる方を対象に生活サービス、商品、クーポンで消費者との接点を持ち、何が求められているかを調査し、消費者のニーズを理解したうえで今後の施策を展開するという内容です。消費者との接点が売り切りの不動産であるリアルアセット企業であり、従来のビジネスモデルでは難しかったLTV(ライフタイムバリュー)向上を目的に「D2C OnBoard」を活用したサービスを展開しました。

■D2C OnBoardの流れ
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従来の「家」だけを売る売り切り型から消費者の生活に必要なサービスを提供できるようなサービスプラットフォームの価値検証ができました。デジタルを活用して、ビジネスを変革するというDXの実現にも大きく寄与しました。

D2Cビジネスモデルを構築してイノベーションを

D2CビジネスモデルとNRIデジタルの「D2C OnBoard」について解説しました。これまでにない消費者との接点の創造、よりリアルタイムで詳細なデータの取得などD2Cビジネスは大きなメリットがあります。一方、国内での先行事例はあるものの、社会に大きなインパクトを与えるまでには至っていません。まずは消費者の根源的なニーズを理解して出発することが重要です。NRIデジタルはビジネス設計から推進サポートまで幅広く伴走することで、根源的なニーズを充足できるD2Cビジネスをつくるご支援を続けていきます。

※Google Cloud は Google LLC の商標です。
 


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