CASE

さまざまなDX実現事例をご紹介
します。

BACK

Suicaデータで理想の住まい探し

東日本旅客鉄道株式会社様
株式会社東京カンテイ様

NRIデジタルでは「まだ見ぬ世界を切り拓こう」というパーパスの下、お客さまと共同での新ビジネスやサービスの創出にも挑戦しています。お客さまが保有されている資産に、NRIデジタルの知見を加えることで、お客さまの本業とは異なる領域でもユニークなサービスを生み出すことができます。

今回は、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)様が保有されているSuicaの利用データに、株式会社東京カンテイ様がお持ちの不動産市場データを組み合わせた新サービス検討の取り組みをご紹介します。本稿でご紹介する「Suicaデータ×不動産市場データ」の活用や、貴社のデータを活用したサービスデザインにご興味をお持ちの方は、お問い合わせください。

理想の「住まい」探しは、理想の「駅」探し

あなたの理想の住まいは、どこにあるでしょうか?便利な都心?それとも緑豊かな郊外?実は、あなたの理想の住まいは、思いもよらない場所にあるかもしれません。NRIデジタルは、JR東日本のSuicaデータと東京カンテイの不動産市場データを組み合わせることで、新しい住まい探しの可能性を検討しました。

家探しでは、間取りや広さなど「どのような家に住むか」に加えて、「どこに住むか」が重要です。特に、首都圏では通勤に電車を利用することが多いため、「どの駅に住むのか」が大きなポイントになります。

どの駅に住むかによって、会社や学校までの通勤時間が変わるだけでなく、お店や公園などの周辺環境は駅ごとに異なるため、日々の生活が大きく変わります。

あなたがまだ知らない「理想の駅」を発見する

東京23区内だけでも500以上の駅があり、すべての駅を候補にすることはできません。多くの人は自分が普段利用している駅または土地勘のあるエリアの中から家探しをしています。新築マンションの購入者を分析してみても、大半は近隣のエリアからの引っ越しです。

一方で、あまり土地勘のないエリアにも目を向けることで、理想の物件に出会いやすくなります。特に、首都圏では鉄道網が発達しているため、目的駅までの所要時間が同じエリアが点在しています。

たとえば、Suicaの利用履歴データ※1によると、東京駅まで30分以下で通えるエリアは図1のようになります。東京駅から30分圏内には、意外にも広範囲のエリアが含まれています。

※1:JR東日本にて、Suicaを利用するお客さまが駅の改札を入出場する際に記録されるデータから、個人を特定する情報を除外した上で、入場駅から出場駅の所要時間を集計し、該当する利用者数が少ない入場駅・出場駅の組み合わせを削除したデータを利用しています。
図1:東京駅まで30分以下で通えるエリア(Suica利用履歴データより)
図1:東京駅まで30分以下で通えるエリア(Suica利用履歴データより)

もちろん乗車時間が同じでも住宅価格は駅ごとに異なります。東京カンテイが保有する駅ごとの相場情報を地図にプロットすると図2のようになります。都心から郊外に向かって不動産価格が低下する傾向がありますが、浦和や大宮のように距離は遠くても価格が高い駅があることも分かります。

図2:駅ごとの相場情報(東京カンテイ保有データより)
図2:駅ごとの相場情報(東京カンテイ保有データより)

東京駅まで30分未満で通える駅で、60㎡の中古マンションを購入する場合の相場は図3のようになります。都心エリアは軒並み1億円以上ですが、郊外には4000万円台で購入できるエリアもあります。

図3:東京駅まで30分未満で通える駅の60平米の中古マンションの相場
図3:東京駅まで30分未満で通える駅の60平米の中古マンションの相場

Suicaデータ×不動産市場データで理想の駅を探索する

ここからは実際に「Suicaデータ×不動産市場データ」を利用して、目的駅までの所要時間や予算から条件にマッチした駅を探索してみましょう。

丸の内に勤務するAさんは、夫婦二人暮らしで、「東京駅まで30分未満、60㎡、予算6,000万円以下」で住宅を探しています。この条件にマッチするのは図4の駅です。

図4:東京駅まで30分未満、予算6000万円以下、60㎡
図4:東京駅まで30分未満、予算6000万円以下、60㎡

将来子供が誕生したときに備えて「広さに余裕のある80㎡の家」に住みたいとすると、候補の駅はかなり少なくなります(図5)。

図5:東京駅まで30分未満、予算6000万円以下、80㎡
図5:東京駅まで30分未満、予算6000万円以下、80㎡

同じ広さ・予算でも通勤時間を10分伸ばすと、選択肢が大幅に増えます。このように、所要時間と住宅の広さはトレードオフの関係にあるため、広さを妥協することでより便利な場所に住む、通勤時間を妥協することでより広い家に住むといった比較検討ができます。

図6:東京駅まで40分未満、予算6000万円以下、80㎡
図6:東京駅まで40分未満、予算6000万円以下、80㎡

複数の駅までの所要時間を考慮して理想の駅を探す

よく利用する駅が複数あり、どちらにも便利な駅に住みたいという方も多いと思います。たとえば、NRIデジタルのオフィスがある「東京」と、取引先のオフィスがある「新宿」の両方に通いやすい場所に住みたいというようなケースです。

東京にも新宿にも30分未満で通える駅は図7のようになります。

図7:東京まで30分未満かつ新宿まで30分未満
図7:東京まで30分未満かつ新宿まで30分未満

普段は東京駅が中心で、新宿には頻繁に行かないので1時間以内に着ければ良い、とした場合には東側を中心に選択肢が増えます(図8)。

図8:東京まで30分未満かつ新宿まで60分未満
図8:東京まで30分未満かつ新宿まで60分未満

ただし「60㎡で6,000万円以下」という条件を加えると、候補は限定されます(図9)。

図9:東京まで30分未満かつ新宿まで60分未満かつ、60㎡で6,000万円以下
図9:東京まで30分未満かつ新宿まで60分未満かつ、60㎡で6,000万円以下

駅までの所要時間だけであれば、乗換案内サイトでも検索できますが、Suicaデータに不動産相場データを掛け合わせることで、複数の駅までの所要時間と物件価格を組み合わせた検索が可能になります。

選択できる条件は限定していますが、実際に動作するトライアル版を公開します。
ぜひ実際に触って、今住んでいるエリアと同じ条件のエリア、もっと条件のよいエリアを探してみてください。


トライアル版ダッシュボードを利用してみる

興味のある駅が見つかったら「マンション図書館」へ

同じ条件の駅が様々なエリアに点在しています。ここはどんなエリアなんだろう?どんな物件があるのだろう?という駅が見つかったら、東京カンテイが運営する「マンション図書館」にぜひアクセスしてみてください。

「マンション図書館」には首都圏の約35,000棟のデータを始め、マンションのあれこれを調べ・学ぶことのできるコンテンツが掲載されています。

Suicaデータならではの不動産検索

鉄道ダイヤデータではなく、Suicaの利用履歴データ=改札の入・出場データを利用しているため、

  • 駅単位ではなくターミナル駅の「改札口」単位の所要時間がわかる
  • 時間帯ごとの混雑度や本数を考慮した実際の所要時間がわかる

といった特長があります。

図10は横浜駅から東京駅の改札別の所要時間を集計したものです。最小値と最頻値で7-9分の差があること(左のグラフ)や、時間帯によって最頻値にも4-5分の差がある(右のグラフ)ことが分かります。

Suicaの利用履歴データを利用することで、

  • 快速の乗車時間は10分だが30分に1本しかない
  • 乗車時間は10分だが降車してから改札口まで5分かかる

といったケースでも、より実態に近い所要時間を知ることができるのです。

図10:横浜から東京までの所要時間
図10:横浜から東京までの所要時間

ここにしかない顧客体験をビジネスに活用する

本稿ではデータを閲覧するためのダッシュボードを紹介しましたが、ユーザに提供する際には「理想の住まい診断」のようなサービス形態を想定しています(図12)。ユーザに家探しの背景をヒアリングして、最適な間取りや駅を診断します。

家探しの初期段階では、エリアや予算が確定しておらず、不動産ポータルで物件を検索しても検討を深めることができません(図11)。今回ご紹介した「Suicaデータ×不動産市場データ」を活用した「理想の住まい診断」サービスを提供することで、検討の初期段階でも自分に適したエリアや広さ・予算をイメージすることができます。

図11:検討初期段階のユーザの課題(ユーザインタビュー結果より)
図11:検討初期段階のユーザの課題(ユーザインタビュー結果より)
図12:Suicaデータを活用した「理想の住まい診断」サービスのイメージ
図12:Suicaデータを活用した「理想の住まい診断」サービスのイメージ

「理想の住まい診断」サービスはユーザの家探しをサポートすると同時に、不動産会社や金融機関にとっても、検討初期段階のお客さまの「家探しの背景」や「予算」を知るためのツールにもなります。
他社よりも早くユーザと接点を持つことで、

  • 他社よりも早く、他社よりも深く顧客を理解して、ニーズにマッチした物件を提案する(不動産仲介会社)
  • 検討初期段階から住宅ローンの候補として認知してもらい、優良顧客には個別に優遇金利などのオファーをしたい(銀行)

といったことが可能になります。

図13:事業会社の課題(ニーズヒアリング結果より)
図13:事業会社の課題(ニーズヒアリング結果より)

このように、JR東日本の「Suicaデータ」に東京カンテイの「不動産マーケットデータ」という独自のデータを組み合わせ、ここにしかない顧客体験を提供することで、ユーザーと事業会社は双方の課題を解決できます。

各社が保有しているデータに、弊社の知見を加えて、ユニークなサービスを生み出すのがNRIデジタルの強みです。本稿でご紹介した「Suicaデータ×不動産市場データ」の活用や、貴社のデータを活用したサービスデザインにご興味をお持ちの方は、お問い合わせください。

吉田 純一

吉田 純一

NRIデジタル株式会社 プロデューサー。不動産業界を中心に、企業の情報システムに関わるコンサルティングや開発プロジェクトに従事。全社レベルのシステムデザインに加え、近年は、デジタルマーケティングやIoTなどの新技術を活用したクライアント企業のデジタル戦略の立案・推進を支援。

<本記事に関するお問い合わせ>

NRIデジタル株式会社 DX企画 吉田・倉澤
marketing-analytics-team@nri-digital.jp

サービスライン

DXコンサルティング

DXサービス開発

デジタルマーケティング