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DXは徹底した「顧客起点」のアプローチを

NRI 常務執行役員
中丸 泰樹

並走しながらお客さまの事業をスケール

私は野村総合研究所(NRI)で約30年にわたり、メーカー、卸、小売、運輸、エネルギーなど、さまざまな産業分野のお客さまのシステム構築に関わってきました。その過程を今振り返れば、DXのアプローチだったと思っています。2019年4月にNRIデジタルの担当役員となったとき、これまでの経験を活かして一層力を発揮できる場にしたいと思いました。デジタル化によってお客さまの事業や業務を変革し、成果を出すまで並走する。それが現在の私のミッションです。DXとは、革新的なプロセス変革やビジネスモデル改革を示します。グローバルレベルでのマーケット変化や競合変化、新しいテクノロジーの登場により、どの企業も新たな戦略を示す必要に迫られており、もはやDXは必然と言えるでしょう。現状では、既存のビジネスモデルを前提にした業務効率化や生産性向上、データ活用や働き方改革が多くを占めています。いずれも大切な取り組みではありますが、まだまだ各社のDXの取り組みはスタートしたばかりと言えます。

DXのポイントはビジネスデザインとテクノロジーの目利き、そして推進力

DXの推進には難しさや多くのハードルがあります。歴史的に積み上げてきた従来モデルやチャネル、もしくは多くの人が関わっている業務プロセスを変革する訳ですから当然と言えます。
DX実現にはいくつかのポイントがあると思っています。まずは、新しいビジネスモデルやプロセスのビジョンを構想しデザインを練り上げる力が必要です。アセットを活かした形でマーケットや現場に対して新たな価値を提供し、経済合理性やシナジーを具体化し、ステークスホルダーにおけるWin-Winの構図も描く必要があります。
次に、実現するテクノロジーの目利き力です。先進性や優位性、コストだけでなく、実現性と中長期に渡って継続可能で競争力を確保できる選択をしなければなりません。
そして、事業とITを繋ぎ推進することのできるリーダーシップが必要です。今まで以上にITと事業・業務が直結しますので、両方に精通するいわゆるDX人材が求められます。
これらのポイントは、言うのは簡単ですが、実現するのは至極難しいことです。

NRIデジタルでは、こういったお客さまのDX推進に寄り添います。ビジネス・戦略・業務、新規事業創造に精通したコンサルタント(ビジネスデザイナー)と、ITの専門家であるシステムエンジニアとデータサイエンティストが、同時並行でスピード感をもってお客さまに関わります。事業構想から始まり、組織設計、システム構築、そして事業運営において、プロジェクト発足時からワンチームで取り組みます。アジリティーの高い事業開発スキームで実行プロセス全体をご支援可能です。

お客さまの事業起点で価値を生み出す試み

こうしたアプローチは、私が2000年代からこれに近いやり方でお客さまを支援してきた経験に基づいています。NRIにおいて私が関わってきたプロジェクトは、主にフロント系のシステム構築でした。事業に直結するフロント系システムは、お客さまの売上や成果に直接影響を及ぼしますから、お客さまのIT部門だけではなく、事業部門からの要求も大変厳しいものがあります。お客さまはNRIに事業の成果を求めているからです。システムエンジニアがシステムを品質良く作るだけではなく、お客さま事業そのものを伸ばし結果を出す取り組みが必要でした。コンサルタントも絡めてお客さまの事業そのものに関わり続ける。システムをどう作るかだけではなく、何を作るべきか、どう使うべきか、どう進化させるべきかを考える。意識的にコンサルタントやデータサイエンティストを絡めてお客さまのプロジェクトに臨み、マーケットとデータに向き合い、試みを一つひとつ積み重ねて事業的な成果を出す活動にしていきました。この活動はまさにDXのアプローチであり、今に活きています。

常に顧客起点、軸となるのは新しい価値の創造

システムエンジニアとは「お客さまのビジネスを深く理解してシステムを作ろう」と昔から話していました。例えば、ECを担当するエンジニアは、通常は朝出社するとコンピューターのログを見て、システムが正常に動いていることを確認します。ですがNRIデジタルのシステムエンジニアは、その前日にどれだけお客さま事業の売上が出ているかをまずはチェックしお客さまと会話します。そしてマーケットがどう動き、競合他社のサービスがどう展開されているのか、お客さまの強みと不足を理解し、どんな打ち手が必要なのかを積極的に考え提案もします。システム開発の役割を超えて「事業主体者の目線で取り組む!」これがNRIデジタルのシステムエンジニアのマインドです。その上でテクノロジーとアルゴリズムで圧倒的なソフトウェアの価値を生み出し提供するのです。

顧客起点でお客さま事業と業務を深く理解し、その変革を最先端のデジタル技術で実現した上で、その後の進化と事業成果の刈り取りまでプロジェクトに長く関わっていく。事業開発から収益化まで責任を持って並走する。これがDX時代の私たちの「顧客志向」です。NRIデジタルには、さまざまな経験や専門性を持つコンサルタント(ビジネスデザイナー)、システムエンジニア、データサイエンティストがいますが、DX人材としてそれぞれがお客さまの事業に精通し、専門性をぶつけ合いながら新しい価値創造を軸に活動しています。常にお客さまに寄り添いながら、新たな価値を生み出していく「顧客志向のDX」を推進していきます。使い古された言葉かもしれませんが、真のビジネスパートナーの位置づけと考えています。
コロナ禍でデジタル化がますます加速しています。デジタルを起点とした企業の事業変革やプロセス変革とともに、企業の枠を超えた業界DX、社会価値創造や社会課題解決の共創DXが始まりつつあります。デジタル化された情報が価値の源泉となるデジタル資本主義を支えていきたいと思います。

 

関連リンク

中丸 泰樹|NRI People | 野村総合研究所(NRI)